解像度を上げる――曖昧な思考を明晰にする「深さ・広さ・構造・時間」の4視点と行動法(馬田 隆明)
スタートアップの現場発。情報の整理、思考の明確化、行動の起こし方を、深さ・広さ・構造・時間の枠組みで考え、数々の具体的手法が体系的に整理されている。
感想
思考を整理する手法が満載で、ハウツー好きの私としては、数々の手法にワクワクした。ただ、私が特に嬉しく思ったことは、
- 「深さ・広さ・構造・時間」と「課題・解決策」の4×2の計8つの枠で、手法が体系的に紹介されていること
- 現状の思考の整理状況を把握し、思考の方向を「深さ・広さ・構造・時間」のフレームで整理できること
の二点。「深さ・広さ・構造・時間」の概念を利用すれば、課題発見から課題解決までを見通すことが出来ると感じた。単にテクニックを列挙されていただけでは、私みたいな人だと、「どのような状況に対して、テクニックを使うべきなのか?」という見極めや、思考の整理が必要なタイミング自体に気付けないことがあり得る。この本は、読んだらすぐ、自分の仕事に使うことが出来そうだし、「この課題理解に関して、広さが不足しているな」と認識しながら行動できるのは良いと思った。
また、思考のベー スは、ツリー構造を作ることだと認識した。自分の考えをツリー構造で書いたら、「深さ・広さ・構造・時間」でチェックすることがスタートのようだ。7段階以上の深さになっているか?1つの枝から2つ以上の枝が生えているかどうか?MECEか?などを見ると良いとのこと。
その他
具体的な思考整理法でためになった箇所抜粋
深さの視点で、解像度を上げる方法として書かれていた、「書く」という手法で大事なポイントがためになったのでメモしておく。
- 主語が明確な文にする。
- 動詞を入れる
- 明確かつ簡潔にする
- 名詞は正確に使う
- 形容詞や形容動詞を数値化・具体化する
- バズワードや抽象的な言葉を避ける
- 言い切る
構造の視点で、解像度を上げる手法に関する部分もメモ
構造を見極めるには、まず渾然一体となっているものを要素に分け、それぞれの要素を比べ、要素間を適切に関係づけながら、重要でないものを省くことです。そうすることで、全体としての意味を理解できるようになります。
物事は抽象度を合わせることで比較可能になりま す。(中略)。同じ抽象度かを把握するには、同じカテゴリーかを確認すると良いでしょう。たとえば「カレーとエスプレッソアフォガードフラペチーノ、どっちを選ぶ?」という質問は、料理と飲み物という別のカテゴリーのものを比較しているため、おかしく感じます。
「構造のパターンを知る」で書かれていたこともメモ。
「分ける」「比べる」「関係づける」「省く」、どの作業も成否を分けるのは、どれだけ多くの構造のパターンを知っているかです。(中略)。たとえば本書で取り扱ったいくつかの構造理解の方法は、(中略)ネルソン・グッドマンによる書籍『世界制作の方法』で挙げられていた「合成と分解」「重みづけ」「順序づけ」「削除と補充」「変形」という概念や、その他のビジネス書の理論や概念も参照しながら、構造化しました。
ツリー構造とシステム
ツリー構造をベースに「システム」として理解していく話があったが、私の経験的に理解が追い付かなかった。仕事で意識してみようと思う。
定義
なお「深さ・広さ・構造・時間」に関しては、本書で以下の定義がされていた。
深さの視点とは、原因や要因、方法を細かく具体的に掘り下げることです。 広さの 視点とは、考慮する原因や要因、アプローチの多様性を確保することです。 構造の視点とは、「深さ」や「広さ」の視点で見えてきた要素を、意味のある形で分け、要素間の関係性やそれぞれの相対的な重要性を把握することです。 時間の視点とは、経時変化や因果関係、物事のプロセスや流れを捉えることです。
本書で紹介されていた本や手法で気になったもの
- 世界制作の方法(ネルソン・グッドマン): 構造パターンに関する本
- 誰のためのデザイン?(ドナルド・ノーマン): 思考だけでなく行動も大事という話で引用された本
- SCAMPER法、TRIZ: アイデアを広げる手法
- 昔話の形態学(ウラジーミル・プロップ): ストーリーの構造に関する本
- 千の顔をもつ英雄(ジョーゼフ・キャンベル): 同上
- クリストファー・ボグラー: 同上
- シド・フィールド: 同上
- ロバート・マッキー: 同上