子育てで大切なこと(アルフレッド・アドラー)
人生の課題への取り組み方や各ライフステージにおいての「協力」について学べる本。 「What Life Could Mean to You」(1931年)の後半部分を訳したもの。
感想
タイトルは、「子育てで大切なこと」となっており、親や教師が子供に何が出来るのか、ということが書いてある一方で、本書後半部分は、「仕事」「人付き合い」「結婚」について書かれており、人生の3つの課題についての記載もあった。 具体例も多く載っており、楽しんで読むことが出来た。小説からの引用もされており、犯罪者についての章で、ドストエフスキーの罪と罰の例が挙がっていた。(ドストエフスキーはまだ読んだことがなく、読みたいと思っているためメモ)
犯罪者であっても、「共同体感覚」と折り合いをつけなければなりません。その一方で、犯罪を働く前に、自分の「共同体感覚」を捨てる準備、「共同体感覚」という壁を打ち破る準備もしなければなりません。だからこそ、ドストエフスキーの小説『罪と罰』の主人公ラスコーリニコフは、2か月間ベッドに横たわり、犯罪を働くべきかどうか考えたのではないでしょうか。
子育てで大切なことを知って自分の人生に活かせれば、という功利的な考えが読む前の私の中にあったが、原題は、「人生は何をあなたに意味するのか?」という意味だ。決して、「人生で何を得られるのか?」といったものではない。「何を得られるか?」ではなく、「何を与えられるか?」ということが大切だと、改めて認識できた本だった。以下は第四章より。
私がいろいろな人に、「まわりの人たちに関心を持ち、まわりの人たちに協力しましょう」と勧めると、よくこんな答えが返ってきます。「でもまわりの人たちは、私にまったく関心を示しませんよ!」。私はいつもこう答えることにしています。「だれかが始めなければなりません。まわりの人たちが協力的じゃないとしても、それは、あなたが気にかけることではありません。私からのアドバイスは、ほかの人が協力的かどうかなんて気にしないで、あなたから始めたほうがいいということです」。
私たちが今の社会で享受しているさまざまなメリットは、すべて、貢献した人々の尽力によって可能になったものです。もしだれかが、協力的じゃなかったり、ほかの人たちに関心がなかったり、全体のために貢献しなかったりしたら、その人の人生は不毛なものとなり、その人はこの世に何の痕跡も残さないまま、姿を消すでしょう。貢献した人たちの仕事(作品)だけが、生き残るのです。そういう人たちのスピリット(精神)が存在し続けます。彼らのスピリットは永遠のものです。ーこうした考え方を、子どもたちにものを教えるときのベースにしたら、子どもたちは、協力して働くことが自然に好きになるでしょう。そういう子どもは、困難に直面しても弱気にはなら ないはずです。それどころか、どんなにむずかしい問題にも向き合い、みんなの利益になるように解決できるだけの「強さ」を身につけることになるでしょう。
五章でも、仕事と協力に関して、
人間は、「協力すること」を学んだからこそ、「労働の役割分担」という、人類の幸福への一番の保証となる大きな発見ができたのではないでしょうか。もし人間たちが「協力」をせず、「過去の協力の成果」もなく、それぞれが一人でこの地球から生活の糧を手に入れようとしていたら、人類が存続することは不可能だったでしょう。
とも書いてある。個人的に一番、感銘を受けたのは、第六章の最後。共同体感覚と人類、歴史の関係について感動的にまとめてある、と感じたので書き写しておく。
人は、「みんなのいい友人」になり、「有意義な仕事」と「幸せな結婚」を通じてみんなに貢献出来たら、ほかの人たちに劣等感を抱いたり、ほかの人たちに負けたと思ったりしないものです。そういう人はこう思うでしょう。「自分はこの世界のこと、このフレンドリーな世界のことがよくわかっている。自分は大好きな人たちに出会えたし、どんな困難を抱えても対応できる」。そういう人はこうも思うでしょう。「この世界が自分の世界だ。自分は計画し、行動すべきであって、期待して待つべきではない」。そういう人は「現在」が人類の歴史のなかの一時期にすぎず、自分が、過去、現在、未来という人間のプロセス(過程)全体と関係があることがよくわかっています。ですが、「今なら、自分が創造的な仕事をして、人類の発展に独自に貢献できる」と感じているでしょう。確かに、この世界にはいろいろな「悪」や問題、偏見がありますし、大惨事も起こります。でも、この世界が私たちの世界であり、この世界のいいところや悪いところは、私たちのいいところや悪いところなのです。私たちはこの世界で働き、この世界を改善すべきですが、こう期待することができるのです。ー私たちのだれもが、自分の仕事(役割)を適切なやり方で担うことで、この世界を改善するための自分の役割を果たすことが出来る。ここで言う「自分の仕事(役割)を担う」とは、人生の三つの課題に協力的なやり方で対処する責任を負うという意味です。結局のところ、一人の人間に求められるのは、次のようなことだけだと考えていいでしょう。ー「いい仕事仲間」であり、みんなの「友人」であり、恋愛や結婚の「ほんとうのパートナー」であること。これはそのまま、一人の人間に対する「最高のほめ言葉」にもなるでしょう。そして、これをひと言で言うとしたら、こうなるでしょう。ー自分が「仲間」であると証明すること。
その他メモ
- 労働の役割分担についての著者の考えと、マルクスの「疎外された労働」という考えが比較可能なら、してみたいと思った。
- 共同体感覚が過去、現在、未来に及ぶと他の本で読んだ気がしたが、根拠を思い出せなかった。