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人間を考える(アルフレッド・アドラー)

· 5 min read

アドラー心理学をロジカルかつ体系的に説明した一冊。 1927年に初版が出た「Alfred Adlr: Menschenkenntnis」の訳本。

感想

目的のために、人は、感情、無意識、夢、性格をどのように利用しているのか、という理屈を、自分にも思い当たる節がある具体的な数々のケースと併せて知ることで、自分の人生に言い訳をしないように注意しようと思える本だった。

本書は二部構成で「総論」と「性格論」に分かれている。 第一部では、アドラー心理学のキーワードとなる、「共同体感覚」や「劣等性」がなぜ生じるかという理屈がとても分かりやすく書かれていた。 個人的には、無意識が目的論の立場からどのように説明できるのか、ということが改めて整理できてよかった。 アドラー心理学では、人は目標によって規定される、という「目的論」という考え方があるが、 それは、記憶や夢、無意識や注意力散漫などにも当てはまる。例えば、

物忘れしやすい人たちは、公然と反抗することは好まないが、物忘れすることによって、自分の課題に関心がないことを、こっそり打ち明けているのである。

と書かれているように、目的のために無意識が利用され、本人もそれを知らないことがある。また、無意識と逆のことが表面化するケースもあるとのこと。

虚栄心の強い人間はたいてい、自分の虚栄心には気づかないで、逆に、自分の謙虚さをみなにひけらかす振る舞いをするのである。虚栄心が強くなるには、虚栄心を意識したり、実感する必要などまったくない。それどころか、この人の目的のためには、良いことですらない。なぜなら、もし自分の虚栄心を意識したらその人は、謙虚な態度をとったりできないだろうからだ。

一方、第二部の性格論は、なぜ性格が形成されるのか、という話から始まり、けちな性格や、引っ込み思案、お天気屋などの各性格がどのように目的を達成しようとしているのかを説明している。私が当てはまると思われる正確についても、ズバッと説明がされており、「私ってこういう性格だからぁ~」みたいな逃げはできないと感じた。さらに、性格の話だけでなく、感情についても説明がされていた。

その他メモ

  • 2021年に新たな訳で出版された本となっており、非常に読みやすかった。
  • 随所でドストエフスキーの話が引用されているのが印象的だった。その中でも、「無意識」の話で出てきたドストエフスキーの白痴は、読んでみたいと思った。
  • kindle版がないのが残念